ロスト・ラブ
「胡桃と茜ちゃん、もう約束してるから……っ、だから」
「えー、でも、みんなで一緒にやったほうが絶対いいって!」
にこやかに言う彼は、きっと悪気はないんだろう。
でも、やっぱり、男の人は嫌だと思ってしまう。
自分の意見を押し通して、こっちの言い分なんてお構いなしなその態度。
心底嫌悪しかない。
震えている手をギュッと握り締めて、その男子を見上げた、その時だった。
「いい加減にしろよ」
どこからともなく聞こえたその声に、体が反応する。
でもそれは、嫌悪とか恐怖とか、そういうのじゃなくて。
「や、柳……」
「悪いけど、先約は俺らだから」
「え?」
視界に入ってきた颯太は、不意に現れるなりいつもより低めの声で彼にそう言い放った。