ロスト・ラブ


「篠原、平気?」

「え……っ、あ、うん。ありがとう、柳くん」


でも、胡桃を心配する颯太の声に少し気を取られてしまった。


胡桃のため、か。

わかっていたことのはずなのに、気にしてしまう自分に嫌気がさす。


「茜お前、ちゃんと拒否しろよな。」


そのあとでやっと私に口を開いたかと思えば、それはいつものお説教で。


「……べつに、颯太に言われなくてもわかってる」

それがなんだかムカついて、私は颯太の目を見なかった。


「ほらほら、喧嘩しないの」


なだめてくれる須藤くんの声に、胡桃までうんうんと首を縦に振る。


「べつに喧嘩じゃ、」

「颯太は不器用すぎなんだよ」

「おい、薫」


そう言った須藤くんの襟を掴んだ颯太に、掴まれた本人はごめんごめんとヘラヘラ笑う。


やっぱりこの2人の関係性は不思議だと、心の隅で思っていた。


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