ロスト・ラブ
放課後になって、私たちはみんなで教室に残って教科書を広げた。
意外なことに教室に残って勉強する人たちは私たちの他にいなくて、4人きり。
「わかんないところあったら言ってね」
そう言ってくれる須藤くんが頼もしく見えてしまってしかたない。
これが、須藤くんのさっきの自信の表れの理由。
1年生の頃から学年トップの成績をキープしている彼以上に、勉強を教えられる人間はいないだろう。
もしかしたらもしかしなくても、去年のように胡桃と2人で永遠に解けない理数問題に苦しむ必要はないかもしれない。
わからないところは須藤くんに聞こう。
そう思ってなんとなく彼の顔を見ると、何故かにこりと笑われた。
「沢野さんは、颯太に聞いてね」
「……え?」
まさかの言葉に、その意味を理解するのに数秒がかかる。