ロスト・ラブ


「あはは、沢野さんの顔、すごく嫌そう」

「いや、そういうわけじゃ」

「でも悪いけど、僕じゃ沢野さんに勉強は教えられないんだよねぇ」


そう意味深に言われた言葉がどういうことなのかはさっぱり分からなかった。


「じゃあ篠原さん、一緒にやろっか」

「えっ、あ、よろしくお願いします!」


すっかり胡桃へと向いてしまった須藤くんは、完全に私を颯太に任せたらしい。


なんだか急に取り残されたような感覚におそるおそる颯太の顔を見ると、じっと見つめられていたその視線と絡まった。


「……っ!」

びっくりしすぎて、咄嗟に顔をそむける。


「んだよ、感じ悪いな」


颯太の文句の言葉なんてそっちのけだ。


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