ロスト・ラブ


上手く数学の内容を飲み込めない私にも、颯太は呆れながらも根気よく説明してくれる。


颯太に勉強を教わるなんて変な気分だ。

中学までは私も颯太もだいたい同じくらいの成績だったはずなのに。


「……いつの間に」

「ん?」

「いつの間にそんなに勉強できるようになったの、颯太」


思わず考えていたことが口に出てしまって、それを聞いていたらしい須藤くんにクスリと笑われた。


「沢野さん、颯太が勉強できるの、そんなに不思議なんだ?」


その言葉に、そんなことないとは言えない。

だって、やっぱり不思議だとは思ってしまう。


「知ってる?1年の時から、颯太はずっと僕に続いて学年2位なんだよ」

「……うん」

「あれ、それは知ってたんだ?」


意外、なんて顔をする須藤くんには悪いけど、そんなことは私だって知っている。


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