ロスト・ラブ
高校に入って、颯太の成績は急に伸びた。
勉強に目覚めたのか、理由はいまだにわからない。
けど、いまや颯太は、須藤くんと並んで学年ツートップだ。
「すごいよね、颯太は」
「……え?」
ポツリと出てしまった言葉に、颯太は目を見開く。
私もそんなこと口にするつもりはなかったから、思わず口を掌で覆った。
「あ、いや、別に……」
「なんだよ」
普段はそんなことないはずなのに、珍しくも颯太は私の言葉に食いつく。
じっと視線を向けられて、なんだか体温が上がった気がした。
一緒にいたこのわずかな時間だけでも、私はかなり調子に乗っているのかもしれない。
颯太とまたこうして過ごせる時間が嬉しいと思ってしまっている。
……私の隣には、胡桃がいるのに。