ロスト・ラブ


「どんどん前に進んでる颯太がうらやましい」


それでも、言葉は正直だった。

心なしか気持ちも体もふわふわしている。
私も、見習わないといけない。


あの日からずっと、私は進めずに止まったままだ。


「茜、お前……」

「ん?」


颯太が、ガタッと椅子を立った。

それに驚いて顔を上げたのは私だけじゃない。

「颯太?どうした?」

「柳くん?」


須藤くんと胡桃の声に反応することもなく、ただただ颯太は真っすぐに私を捉える。


それが妙にドキドキして……。


「お前……、熱ないか?」

「……へ」


かと思えば、真面目な顔で私にそう尋ねた。


「熱……。誰が」

「お前だ、お前」


真面目な顔から一変、ため息を吐いて、颯太はそのまま机に広げた教科書たちを片付けていく。

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