ロスト・ラブ
「ほら、それしまえ。帰るぞ」
「えっ、ちょっと……っ」
それがあまりにも急な展開だったから、自分のことを言われてるのかがうまく理解できなかった。
「え、茜ちゃん、熱あったの!?」
当然、私も理解できてないことが胡桃たちも追いついてるわけがなくて。
「いや、あんまり自覚はないんだけど……」
「バカ言うな。篠原、こいつの体温確認してやって」
私の意見なんかそっちのけで、颯太は胡桃にそう言った。
「茜ちゃん、触るね?」
「う、うん」
胡桃の掌が、私の額に触れる。
ひんやりとしたその手が気持ちいいと思ったと同時に、目の前の胡桃は目を丸くした。
「あ、茜ちゃん大変だよっ。すぐにおうちに帰って休んで!」
一気に表情が心配の色に変わった胡桃が、そう言って私の教科書たちをカバンにしまっていく。