ロスト・ラブ


え、そんなに……?

自分じゃ全く自覚はないけれど、胡桃の様子を見る限り熱があるのは本当らしい。


「柳くん、茜ちゃんをお願いします」

「ん」


そして何の抵抗も意見も言えないまま、私は早々に颯太と帰ることになった。




「ねぇ、篠原さんは気づいてた?」

「ううん。全然気づけなかった……」

「沢野さん本人も自覚ないのに、颯太の奴、なんでわかったんだか」

そのまま教室に残された2人が、どんな会話をしていたかなんて知ることもなく。





「そ、颯太……!颯太ってば!」


帰路を歩きながら、私は何度か颯太の名前を呼んだ。


それでも振り返ってくれない颯太は、ただ前を向いてひたすら歩く。

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