ロスト・ラブ
それでも歩くスピードがいつも以上にゆっくりなのは、きっと私に気を使ってくれているんだと思う。
「……慣れないことするからだろ」
「え?」
やっと颯太が言葉を口にしたのは、本当に不意だった。
突然のことにうまく聞き取れなくて聞き返すと、チラッとこちらに視線を向けた颯太がまた同じことを言う。
慣れないことするからだ、と。
「どういう意味?」
「男嫌いのお前が、急に男に態度変えて優しくするからこうなったんじゃねぇの」
ぶっきらぼうな言い方だけど、一応、心配してくれてるんだとは……思う。
そんなことを言われるだなんて思ってもいなかったから、思わず歩いてた足を止めてしまった。
「茜?」
そんな私に気づいた颯太も、一緒になって止まってくれる。
そして私の名前を呼びながらやっとこっちを向いてくれたから、なんだかよくわからないけれど泣きそうになった。