ロスト・ラブ
───少しでも油断すると、すぐ揺らぎそうになる。
「茜、大丈夫なの!?」
茜を家まで送ると、玄関から血相を変えて彼女の母さんが飛び出してきた。
「え、お母さん、なんで知って……」
「いいから!早く着替えて寝なさい。ね?」
いつものごとく勢いに押されながら、茜は家の中へと入っていく。
途中何かを言いたげにこっちを見たけど、それには気づかないふりをした。
「ごめんなさいね、颯太くん。知らせてくれてありがとう」
茜が部屋へ入ったのを確認した後で、おばさんが俺に向き直った。
帰る途中でおばさんに茜のことをメッセージで送っておいたのは、どうやら正解だったらしい。
「いいえ。あいつ、自分じゃ自覚ないみたいだったから」
「普段から熱なんて滅多にない子だったのよ。……なんで急に体調崩しちゃったのかしら」
「………」
その理由に検討がついてる、なんて言ったら、きっとおばさんは心配でどうにかなってしまうだろう。