ロスト・ラブ
ここ数日で茜の男に対する態度に変化があったことは、きっとおばさんは知らないとは思うから。
「じゃ、俺はこれで」
「えぇ、ありがとうね」
特に余計なことは言わずに、軽くお辞儀をして俺は早々に隣の自分の家へと戻った。
「あー……、やば」
自室のベッドの上であおむけに寝転んだところで、ポツリと本音が漏れる。
自分が思ってる以上に今日の放課後の時間は素でいてしまったと、今更ながらに後悔が頭の中をぐるぐると巡った。
机の上に置いてある写真立てが目に入るたび、強く思う。
……俺はこれ以上、茜に近づいてはいけない、と。
それがわかっているはずなのに、いまだに完全に切り離せていないのは俺の意志が弱いからなんだろうか。
後悔、なんて、そんな生ぬるい言葉で表してはいけないくらいのことを、俺は犯しているのに。