ロスト・ラブ
───ピーンポーン
ただ天井を仰いでるだけの俺の耳に、チャイムの音が聞こえた。
重い体を起こして玄関の扉を開けると、そこにいたのは……茜の母さん。
一瞬胸の奥がざわついた。
まるで、あの時みたいで。
「……どうかしました?」
なんとか平静を装って声を出すと、おばさんは困った顔をして笑った。
「私ったらね、お薬も熱さまシートも全部切らしちゃってることに今気づいちゃって。悪いんだけど颯太くん、私が出かけてる間、茜のそばにいてあげてくれないかな?」
「……え?」
まさかの頼みごとに、思わず目を見開く。
それは、さすがに、ちょっと。