ロスト・ラブ
「買い物なら俺行きますよ。おばさんがあいつのそばにいた方がいいんじゃ」
「うーん。でも、ついでにあの子が食べられそうなものとかも買いに行きたいのよ。ダメかな?颯太くん」
「……いや、」
ダメ、でしょ。それは、さすがに。
そう言えたらいいはずなのに、おばさんの目を見たらはっきりと言えない自分が情けない。
もうこの時間だ。
家の中とはいえ、おばさんが熱のある茜を1人にしたくないという気持ちは痛いほどわかる。
それに今の俺じゃ、茜が食べられそうなものなんて全くわからない。
でも。
「いいんですか、おばさん。だって俺、」
そこまで口にして言葉を飲み込んだ。
これ以上言わなくても、たぶんおばさんはわかってる。