ロスト・ラブ


……だって俺、"男"、ですよ。


痛いくらいにこの言葉の重さが心臓に突き刺さる。


それでもおばさんは、ニコリと笑って俺の手を取った。


「颯太くんだから、お願いしたいのよ」


その信頼のまなざしがまぶしくて、嬉しくて、……重くて。


「わかりました」


俺は首を縦に振って、出かけるおばさんの背中を見送った。




『茜が帰ってきてないの』


───あの日のことは、一度だって忘れたことはない。



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