ロスト・ラブ


「柳くんと、何かあったんだよね……?」


胡桃に真っすぐに見つめられながらのその問いに、私は観念してコクリと首を縦に振った。


あぁ、もう、だめだ。胡桃に隠し事なんかできない。

……もう、自分でもどうしたらいいのかわからないんだ。


颯太のことは嫌い。大嫌い。

そう思いたいのに、それとは真逆の感情がどうしても顔を出す。


「守って……くれようとしてたの。それなのに私、全部台無しにしちゃった」


思わずこぼした弱音は、本当に何とも情けない。


そのまま私は、颯太に言ってしまった言葉のことを胡桃に話した。


そのときの颯太の表情が忘れられないことも。

そのときの私の想いも。



『俺はお前を怖がらせる』


……そして。



「……あのね、胡桃」

その言葉の意味を説明するには、私の過去の話にも繋がってきてしまう。


家族以外、誰も知らないはずの忘れたいあの日の出来事。


誰にも知られたくない汚れた自分の話。


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