ロスト・ラブ
言うつもりなんて、全くなかった。
今までも、……これからも。
「……あの日から、全部知ってた」
重い口を開いた第一声。
覚悟を決めた俺のその最初の言葉に、目の前に座っている茜も、同じく覚悟を決めたようにキュッと口を結んだ。
茜を部屋に入れたのなんて何年ぶりだろう。
もうこんな時間だ。刻々と暗くなっていく外で話すという選択肢は、最初からなかった。
かといって、自室にコイツを入れるというのもかなり覚悟を決めた方だと思う。
もちろん、距離は取った。
お互い、ラグの上に置いてあるローテーブルの端と端。茜はドア側。
今までにないくらいに内心はかなり緊張しているけれど、それは悟られたくない。
俺なんかより確実に茜の方が緊張しているだろうから。