ロスト・ラブ




────あの事件以降、茜が中学に登校してくるのはまばらになった。


完全なる不登校でもないが、明らかにおかしいのは周りの奴らも気づいてる。


学校側も、事件について把握しているのはほんの一握りの上の人間と担任だけだと、茜の母さんから聞いた。



『茜には、必ず俺がそばにつきます』


あの事件の翌日、俺は茜の家を訪ねておばさんにそう言った。


中学生のガキに何ができるんだと思いながらも、そうせずにはいられなかったから。


茜に酷いことを言って一緒に帰らなかったこともすべて話した。

それでもおばさんは俺を責めることなんて一切なくて『ありがとう。よろしくね』と涙を浮かべて俺に頭を下げた。



……それが少しプレッシャーに感じるとか、俺にはそんな資格はない。


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