ロスト・ラブ



変化が起きたのは、高校に入学してすぐのこと。


男子のいない女子高に電車を使って通うよりも、歩いて登下校できる一番近い高校の方が安心だからと茜の母さんがこの高校に決めたらしい。


「ねぇ、いつまでついてくるの?」

「仕方ねぇだろ、行先同じなんだから」

「……だいたい、なんで颯太と同じ高校で同じクラスなのよ」

「知るか。お前がパクったんじゃねぇの?」


だいぶ俺と普通の会話をしてくれるようになった茜とは、毎日こんな調子。

茜の進路に合わせただなんて、口が裂けても言えるわけがない。


……ましてや、合わせたのが高校だけじゃないだなんて。



「わー、また今日も一緒に登校ですか。毎日ご苦労だね、颯太」

「うるせぇぞ、薫」


1年の教室前を通る廊下の、一番奥。

そこで楽しそうに笑って俺を待つこの須藤薫は、中3の冬から関わるようになった。


< 205 / 285 >

この作品をシェア

pagetop