ロスト・ラブ
「ははっ、相変わらず不器用め。ま、そこが颯太に"協力"した理由だけどね」
「………」
ニコニコ笑う薫は、そう言って手に持っていたいちごミルクを飲む。
「よく朝からそんな甘いもの飲めるよな」
「え、そう?颯太も糖分補給くらいしときなよ。どうせ昨日もろくに寝てないんでしょ?」
相変わらずよくわかっている薫は、「はい」とポケットから出した甘ったるそうな飴を俺に差し出した。
「2時間は寝た」
「あーはいはい。それは寝たって言わないから。ったく、そんなに無理しなくていいのに」
肩をすくめながら薫はそう言うが、コイツがいなかったら俺は茜の近くにいられなかったかもしれない。
「律儀だよね、颯太って。沢野さんの為に"理事長の孫"である僕に近づいたくせに、クラス分けの頼み聞き入れたら『誠意を見せる』って成績上位取っちゃうんだから」
「………」
「それも、僕が首席になるように器用に2位だし」