ロスト・ラブ


ヘラヘラ笑ってはいるけど、こんな俺よりずっと薫の方が苦労してるに決まってる。


理事長の孫、だなんて、どれだけのプレッシャーがあるのかわからない。


俺のこんな頼みを揉めることなく理事長に通してくれたのは、薫の今までの積み重ねがあるからだろう。


「言っとくけど、2位取りたくて取ってるわけじゃねぇぞ。オール満点なんて誰が取れるか」

「あはは、できたとしても同率1位だね」

「……むかつく」


薫の存在にどれだけ救われたか。

俺1人じゃ、茜のずっとそばにいることなんてできなかった。



……そして、もう1人。


「胡桃に触らないでくれる?」

「はぁ~出たよ、沢野さんの男嫌い」


教室に戻ると、また同じような光景が広がっていた。


茜と、1人の男子生徒。

その茜の後ろには、茜の親友になったらしい篠原胡桃がいる。


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