ロスト・ラブ


高校に入ってから、茜が男嫌いだというのは学年中にあっという間に広まった。


理由は、茜の男に対する態度が異常なまでにきついから。


そんな茜が彼女に、男嫌いではなく恐怖症だということを話しているのは、なんとなくわかってはいた。


それだけ、あいつが心を許した女友達がそばにいることはかなりありがたい。

……少々男に言い寄られやすいのが厄介ではあるけど。


ふっと息を吐いて、その場に近づく。


本当は男の方を引きはがしたいところだが、そこはグッとこらえて。



「茜、いい加減にしろ」

俺は、冷たい言葉を茜にぶつけた。


「……なに、颯太」


茜が俺に心底嫌な顔を向けてくるのにはもう慣れた。


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