ロスト・ラブ


「お前がやるのはこいつに喧嘩売ることじゃねぇだろ。ちゃんと篠原を守ってやれ」


茜の手足が震えていることはわかってる。

きっと、立ってるのもやっとなくらい、恐怖に襲われてるのもわかってる。


けど、悪いが俺はそれを支えてやることはできないから。



「あ、茜ちゃんっ。行こう……っ!」


体の小さな篠原の引っ張る力と、茜の俺に対する怒りを原動力に自分の体を支えてもらうしかない。


あとは……。


「……お前はこっちに来い」

茜に近づく男を、二度と近づけないようにするくらいしか。






「───まぁ、そんな具合で脅したり、聞き分けない奴らにはだいぶ容赦なく殴ってきたと思う。あと、薫や篠原を利用して卑怯な手もたくさん使ってきた」

「………」


大方話し終えたところで、いつの間にか下に向けてしまっていた視線を上にあげた。


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