ロスト・ラブ
終業式も終わり、夏休みに入った。
今の私の心は、今までにないくらい軽い。
それも全部、颯太とのことがあったからだと思う。
中学の事件のこと。そしてその日からずっと責任を感じて守ってくれていたこと。
あの日から颯太も私と同じように悩んで苦しんでいたことを、私は初めて知った。
自分のことで精いっぱいで、何も知らなかった出来事。
私の知らないところで颯太がずっと守ってくれていたことが、申し訳なくも素直に嬉しかった。
……それに。
「………」
気が付けば、右手の小指を見つめてしまう。
あのときのぬくもりは、今でもずっと感触が残っていた。
颯太に、触れた。
触れた、と言っていいものなのかもわからないけれど、あのとき確かに、私は颯太に対して拒絶反応を起こさなかった。
これは私にとってかなり大きなことだと思う。