ロスト・ラブ


買い物に付き合わせたことに対して須藤くんに謝ると、須藤くんはにこりと笑って意味深にそう言う。


「おいこら、薫。それ以上喋んな。んで近づくな」


……が、聞き返すよりも先に、颯太が彼の首根っこを掴んで私から距離を取らせた。


「いちいち細かいなぁ、颯太は。ちゃんと一定の間隔空けてたろう?」

「……そういう問題じゃねぇんだよ」

「あはは、不器用め」

「うるせぇ」


ケラケラ笑う須藤くんと、そっぽを向く颯太。


なんだかんだ、やっぱりこの2人は仲がいい。

最初はなんでこの2人が一緒にいるのか不思議でしょうがなかったけれど、颯太に話を聞いただけの関係でもない気がする。


この前颯太は須藤くんを“利用した”と言っていたけど、本当にそれだけの関係なら、きっと今頃は颯太も須藤くんも一緒にいないと思うから。


「とりあえず、胡桃の家に寄ってもいい?胡桃と茜ちゃん、着替えないとだから」

「あぁ、そうだったね」


胡桃の提案で、ひとまず私たちは学校から一番近い胡桃の家に向かった。


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