ロスト・ラブ
持ってきていた私服に着替えて、準備を整える。
颯太と須藤くんには、玄関で待ってもらっていた。
「よし、行こっか、胡桃」
「あっ、待って茜ちゃん!」
2人を待たせるのも申し訳なくて、着替えてすぐに玄関を出ようとした私に、同じく着替え終わった胡桃が引き留めた。
花柄のワンピースに身を包んで、髪は珍しくポニーテール。相変わらず私の親友は可愛いの一言に尽きる。
「これ、茜ちゃんに渡したくて……。補習、ずっと付き合ってくれたお礼!」
にこりと笑う胡桃から手渡されたのは、小さな包み。
「開けてみて」と言われて広げてみると、それは花の形をした可愛らしいヘアピンだった。
「え……、これ、本当にいいの?」
「うんっ。見て見て、胡桃のこのヘアゴムとお揃いなの~」
くるっと後ろを向いた胡桃の髪を束ねたヘアゴムが、私の手にあるヘアピンと同じようにシルバーにキラッと光る。
それが胡桃によく似合っていて、思わず笑みがこぼれた。