ロスト・ラブ
「……なんか、いま私無敵かもしれない」
「は……?」
思わず口にした言葉に颯太は心底不思議そうな顔をしたけど、だってそう思っちゃったんだもん。
なんだろう、これ。
目の前の人ごみも、全然不安がない。
「颯太がこうしてくれたら、私、なにも怖くないかも」
颯太の目を見て言った。
すると颯太は、驚いたように目を丸くしたあとで。
「……そうかよ」
小さいその返事とは裏腹に、安心したような、照れたような、それでいて嬉しそうな。そんな顔をしてくれるものだから。
あぁ、好きだなぁ。なんて、また颯太への『好き』が積もった。
「茜ちゃーん!こっちこっち!」
少し先に進んでいた胡桃と須藤くんのあとを、颯太と追った。
もちろん、手は繋いだままで。