ロスト・ラブ


「次のHR、修学旅行の計画だろ。薫が班のメンバーで集まろうって」

「あ、そうだね。わかった。小春ちゃんたちには私から言っておくね」

「ん。よろしく」


用件だけを告げた颯太は、早々に自分の席へと戻っていく。


それだけのことなのに、当たり前の日常会話を颯太としているのがいまだに新鮮な気がして少し落ち着かなかったりする。


こんな会話を私と颯太が普通にするものだから、クラスのみんなはかなり驚いているようだった。


それに加えて須藤くんとも普通に話せるようになってきているのもあって、首を傾げる人も少なからずいるみたい。



少しずつ、私の世界が広がってきている実感がある。



「胡桃、絶対鹿におせんべい上げたい!」

「あははっ、胡桃ちゃんってば何その目標~」

「知ってた?鹿せんべい持ってると鹿に襲われるんだよ?」

「えっ、そうなの?」


HRの時間には、胡桃は小春ちゃんと桜ちゃんと楽しそうに笑っていた。


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