ロスト・ラブ
急に心臓の音が大きくなっていくのがわかった。
「え、なに急に……」
こんな時でも私の反応は心底可愛くない。
本当はドキドキしてる、なんて言えるわけもない。
「協力、ってやつ」
早くしろよ、なんて口では言うくせに、私から触れるまで颯太は待っていてくれている。
「ガキの頃みたいな急なスキンシップは無理かもしんねぇけど、"コレ"なら大丈夫だろ」
「……っ」
その言葉で思い出すのは、あの花火大会。
もう、颯太とは手を繋げる。
颯太もそれがわかっているから、この提案をしたんだ。
わかってる。わかってはいるんだけど。
「そ、颯太はいいの?」
「は?なにが」
「……イヤじゃない?」
チラッと周りに目を向ける。
どうしても思い出してしまう中学時代。
私と一緒にいることでからかわれるのが嫌いだった颯太。
今は誰もいないけど、下校時間からは少しずれているとはいえ、周りに同じ学校の人がいない保証なんてないのに。