ロスト・ラブ
ふわっと颯太の匂いが鼻を掠める。
ブレザーの両端を掴んだままの颯太の手に、ゆっくりと体が引き寄せられていく。
「どう?」
「どう……と、言われても……」
「平気か?」
その質問には素直にコクンと頷く。
……けど。
べ、別の意味では平気じゃない……っ。
目の前には颯太のネクタイ。
ギリギリお互いの制服が掠めるくらいで、触れてはいない。
そう、触れてはいないんだ。
でもこんなの、抱きしめられてるのと変わらない。
ドクン、ドクン。
心臓の音さえ、颯太に聞こえてしまいそうな距離。
や、やばい……。
ドキドキしすぎて、心臓がおかしくなりそうだ。