ロスト・ラブ


そしてやってきた、修学旅行当日。


「うわ~、金閣寺懐かしい~」

「あはは、中学の時も見に来たもんね」


まず初日、京都にやってきた私たちは、さっそくお寺巡りをしていた。


中学の頃に見たことがある私以外の班のみんなは、場の雰囲気を覚えているのかサクサクと進んでいく。


「……本当に金色なんだ」

一方、初めてここに来た私は、そんなみんなの後ろについてひっそりと観光をしていた。


「ちなみに、銀閣寺は銀色じゃないぞ」

「っ、颯太」


そしてその横には、必ずと言っていいほど颯太がいる。


どこか気まずいのは変わらないはずなのに、私のそばにいてくれようとしている颯太。


「あ、のさ……」

「ん?」

「や、えと」


なんとかあの日のことについて話をしたいのに、いざとなるとどう言っていいのかがわからなくなる。



颯太は私のこと、どう思ってる?

……なんて、いまだに勇気が出ない私には聞けるわけもなくて。


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