ロスト・ラブ
「そんなに隣にいてくれなくてもいいよ」
私は大丈夫、と、やっぱり強がりな自分が顔を出す。
「……バーカ」
颯太はそう言うけれど、それで離れていくことは何故かしない。
……そうだよ、颯太。
私、バカだから。
そんなことされてたら、勘違いしちゃう。
「うわ、金閣寺やべぇ」
「お前の語彙力、さっきからずっとそれだけな」
ぎゃはは、なんて背後で笑い声が聞こえる。
「茜、こっち」
ふと、颯太に呼ばれたと思ったら、その瞬間に左手にぬくもりを感じて。
ぎゅっと握られたその手に、ゆっくりと引き寄せられていくのがわかった。
その横を、別の高校の男子の団体が通り過ぎていく。
「……ったく、周り見て歩けっての」
ボソッと悪態をつく颯太の声が、真上から聞こえた。