ロスト・ラブ


「何って、話してただけだよ。ほら、ちゃんと距離はとってる」


そういえば、初めて須藤くんと話していた時も同じようなことがあったっけ。

それでも前を少し違うのは、私でもわかる。


「茜も。薫だからまだよかったものの……。もう少し警戒心持てよ」

あぁ、なんでだろう。


「茜?お前聞いてんの?」

颯太に怒られてるはずなのに、なんだか嬉しいと思ってしまう。


「須藤くん、ありがとう」

「いえいえ」

なんか、少し気持ちが楽になった。


「茜ちゃーん、買ってきたよ~……って、あれ?」


そのタイミングで胡桃も戻ってきて、私はすぐに胡桃に駆け寄ってその体をギュッと抱きしめた。


「あ、茜ちゃんっ?」

「胡桃、ちょっと行ってくるね」


その言葉で理解してくれたのか、胡桃も一瞬ギュッと抱きしめ返してくれる。


そして。



「颯太、話があるの」

真っすぐと颯太の目を見て、その手を掴んだ。


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