ロスト・ラブ
「ちょ、茜……?」
胡桃と須藤くんを背に、そのまま颯太の手を引っ張って歩く。
心臓はドキドキと音を立てているのに、どこか不思議と落ち着いていた。
もう逃げたりしない。
この気持ちごと、全部────。
「茜?」
ホテル内の人気のないところまでやってきたところで、私は足を止めた。
「颯太、私ね、」
ゆっくりと振り返ってニコリと笑う。
颯太、びっくりするかな。
でもごめんね、今の私にはこれしか思いつかないの。
真っすぐと颯太へ手を伸ばして、その頬に手を添えた。
目一杯背伸びをして、颯太の唇に自分のを重ねる。
「───颯太が好き」
目の前にある颯太の瞳の中に、私が映っているのが見えた。