ロスト・ラブ


夢を見ているかのような、幸せな瞬間。


「本当に……?」

「バーカ。お前が言わせたようなもんだろ。もう気持ち隠さねぇよ」


遠慮がちに伸びてきた颯太の手が、私の頬に触れる。


「抱きしめていいか?」

「そ、そんなこといちいち聞かないでよ……っ」


もう、颯太にされることなら私には全部幸せなことなんだから。


フッと優しく笑った颯太が、私の背中に手を回した。


引き寄せられた体が、すっぽりと颯太に包み込まれる。


いつもとは違うシャンプーの香りに、ドキドキと胸が高鳴った。


「ずっと、こうしたかった」

「うん、私も。どうしよう、今すごく幸せ」

「……お前、よくそんな恥ずかしいこと言えんな」


颯太のその突っ込みがなんだか可笑しくて、クスッと笑ってしまう。


「颯太は?」

「おい、言わせようとすんな」

「えへへ」


こんな日が来るなんて、夢にも思ってなかった。


2人で一緒に幸せになればいい、か。

須藤くんにも、胡桃にも、ちゃんとお礼言いたいな。


たくさんの人たちに支えられて、守ってもらって、私は今こうして前を向けているんだ。



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