ロスト・ラブ
けれど教室に入った瞬間、私たちは何を言うわけでもなく距離を離す。
お互い、一緒にいることは望んでいない。
特に颯太は、ずっと一緒な私の存在が煩わしくて仕方ないらしく、教室に入ると必要最低限以外話しかけてはこないんだ。
私だって、颯太といつも一緒にいたいわけじゃない。むしろ、離れていたい。
だって颯太なんか、……大嫌いだから。
「茜ちゃん!」
黒板に張り出された出席番号順の席を確認していると、後ろから可愛らしい声に呼ばれた。
ヒョコッと私の前に現れたのは、去年同じクラスで仲良くなった篠原胡桃(しのはらくるみ)。
くりっとしたぱっちり二重に、ゆるく巻かれた長い栗色の髪。おまけに145センチという小ささで、男子から人気ナンバーワンの自慢の親友だ。