ロスト・ラブ
胡桃に言い寄る男子は今までもたくさんいた。しかも、下心満載の人たち。
そのたびに胡桃は困っているし、それを見て面白くないと思う女子たちに睨まれるしで、いいことなんてひとつもない。
「やめたら?」
痺れを切らして、思わずそんなことを口走ってしまった。
当然、その男子の視線は胡桃から私へ向く。
「あ、茜ちゃん……っ!」
視線を向けられてもその男子を見上げようとしない私を見て、胡桃が慌てたのがわかった。
優しいなぁ、胡桃は。その胡桃の優しさを知っているからこそ、私は彼女を守りたくなる。
……結局最後まで守れたことなんて、一握りのくせに。
震え始めた手を必死に抑えて、ゆっくりと顔を上げた。
「……あ、沢野さん」
「勝手に名前呼ばないでよ。自分は名乗りもしないくせに。迷惑。どっか行って」