ロスト・ラブ


不思議に思ってしまったのがバレたのか、颯太は須藤くんではなく私の方を見た。


「お前、男嫌いが暴走して薫のこと殴ったりすんなよ」

「な……っ、そんなことするわけないでしょ?」

「ハッ、どうだか」


鼻でバカにしたように笑う颯太に、読んでいた本をパン!と閉じる。


あぁ、そう。そういうことね。

須藤くんは颯太の大事な友達だもんね。


別に、颯太のことが嫌いでも、さすがにそんな野蛮なことするわけがないのに。


「颯太こそ、いくら胡桃が可愛いからって暴走しないでよね」

「……は?なんのこと言って」

「言っておくけど、私の可愛い胡桃を颯太なんかに渡さないから」


そう言い放って、プイッとそっぽを向く。


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