ロスト・ラブ
自分でもよくもまぁこんなに冷めた声が出せるなと感心する。
一瞬、相手の眉がピクリと動いた。
……やばい、かな。
そう思ったところで、もう遅い。
「なんだよ、その言い方。沢野さん、男嫌いだからってそういう態度はよくないと思うよ」
胡桃へ向けていた表情からは一変、彼はキッと私を睨みつける。
脂汗が滲んできたのが自分でもわかった。
「まじでその性格もったいねぇよな。沢野さん、見た目だけは可愛いのにさ」
「ねぇ?」なんて言って、さらに一歩詰め寄られる。
「あ、茜ちゃ……っ!」
胡桃が慌てて私に向かって手を伸ばしたけれど、間に合わなかった。
「ほら、笑いなよ。そしたら胡桃ちゃんみたいにチヤホヤしてあげる」
頼んでもいないのに、そんな偉そうなことを言ってニヤリと笑う。……その手は、私の顎をクイっと持ち上げた。
その瞬間、私のすべての動きが止まった。
心臓が大きく音を立て、息すらまともに吸えない。
……だめ。やめて……。
私に、触らないで。