ロスト・ラブ


ずっと私は、男の人という存在に関わらないように、嫌われる言動ばかりをしてきた。


きっと彼らの私への怒りはその一環なんだろう。


……申し訳ないけど、全く覚えてはいない。

男の人と関わること自体、私にとってはどれも必死。


必死すぎて、……怖すぎて、覚えてなんかない。


「なぁ、あのときのこと、謝れよ」

「っ、」

「なぁって!」


荒げた声と同時に、パシッと手首を掴まれた。



───っ!


ドクンドクンと、心臓が一気に加速する。

全身が危険信号を出した。


あぁ、ちょっと、まずいかも。

振りほどく力なんてない。


男の人という存在に、私は……勝てない。



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