ロスト・ラブ


「ほんっとうに、何かあったらすぐに連絡してね!?」

「あはは、うん。わかったよ」

「絶対だよ、茜ちゃん!」


そう何度も何度も念を押されて、胡桃とは校門を出たところで別れた。


胡桃は校門を出て左方向。私は右。


右側はさらにすぐに角を曲がるところがあって、そこを曲がった瞬間、私の足は止まった。



「……え」


思わず声が漏れてしまったのは、その場にいるはずのない人が立っていたから。


「何してるの……颯太」


私が声をかけると、その人……颯太は、ゆっくりと視線をこちらに向ける。



「帰るぞ」

「えっ」


そしてそれだけを言うと、颯太は家の方向へと歩を進めた。


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