ロスト・ラブ
「ありがとう、颯太」
そうお礼を口にすると、やっぱり返事はなかった。
たぶん、気を失ったわたしを保健室まで運んでくれたのも颯太だ。
そして、私が帰るまで待っててくれた。
胡桃がしどろもどろだったのは、きっと颯太になにか言われたんだろう。
颯太は、私のことが嫌いだから。
きっと、私と余計に関わりたくなかったんだと思う。
でも、待っててくれた。少しくらい、心配、してくれたんだ。
純粋にそれが嬉しくて、前を歩ている颯太の横に並ぶ。
ちらっと颯太がこっちを見た気がしたけど、特に何も言われることはなかった。