ロスト・ラブ


保健室に運ばれた時の記憶はもちろんない。


私は抱えられたんだろうか。

颯太に、触れられたんだろうか。


考えてはみるもののその光景はまるで想像できない。……でも、嫌だとは思わなかった。


少し前まであんなことがあったのに、じわじわとあたたかい気持ちが込み上げてきてしまう。



───あぁ、やっぱり私は忘れられていない。


押し込んで、押し込んで。

頭の中で必死に"大嫌い"だと言い聞かせてきたというのに。


だって、どうしようもない。



好きな人に触れられない、だなんて、私自身どうしたらいいのかわからないんだから。



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