ロスト・ラブ

「あんま、男に喧嘩売るなよ」

「え?」


何を言われるかと思えばそんな意外なことで、私は思わず颯太の顔を見上げる。


え、なに。どういう風の吹き回しだろう、これは。


「"男嫌い"が男を怒らせたら、仕返し来るに決まってんだろ」


そう口にする颯太は、見上げた私の目は見ずに、ただまっすぐ前だけを見ている。


相変わらずの無表情。

……と見せかけての、不機嫌顔。


これはたぶん、心配してくれてるんだろうな。


いくら大嫌いな私でも、一応は長い付き合いの幼馴染だ。

男子に手を掴まれたくらいで気を失う私を見て、さすがに驚かせてしまったに違いない。


……あれ、と。

ふと頭に疑問がよぎった。


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