ロスト・ラブ
……気持ち悪い。怖い。私に触らないで。
いよいよ汗が止まらなくなって、本気で吐きそう。
「茜」
そんなとき、見知った声が私の名前を呼んだ。
言葉を聞き取れる状態じゃないはずなのに、その声だけはしっかりと耳に、頭に、入ってくる。
「そ、うた」
それは、さっきまで嫌々一緒に登校してきた幼馴染で。
「何してんの。篠原泣きそうじゃん。保健室にでも連れてってやれって」
「……っ」
何を言い出すかと思えば、颯太は心配そうに胡桃を見つめてそう言った。
「柳くん、何言って……」
「篠原も大変だな。こんな気の利かない親友を持って」
颯太の声だけが、嫌でも聞こえてくる。
……本当、嫌い。大嫌いだ、颯太なんか。