ロスト・ラブ
「颯太。ねぇ颯太ってば」
ツンツンと肩を突いてみた。ポンポンと背中を叩いてみた。
「あーもう、うっせぇな!」
でも、あまりにもしつこく話しかけすぎたせいか、颯太は私の手をパシッと振り払って大きな声を出した。
教室の中だったから、クラスの子たちから一気に視線を浴びる。
まさか颯太がそんなに怒るだなんて思わなかったから、私も思わず一歩あとずさりしてしまった。
「いちいちしつこいんだよ。今日は俺友達と遊んで帰るから。……つか、中学生にもなってお前なんかと一緒に登下校するとか、マジでナイから」
「……っ」
冷たい視線。冷めたような低い声。
初めてだった。
颯太にそんな視線も声も向けられたことなんて、いままで一度もなかったから。