ロスト・ラブ
「……い、言われなくてもそうするわよ」
イラっとした勢いか、なんとか立ち上がって胡桃の手を掴む。
私の尋常じゃない手汗に気づいたのか、胡桃が目を見開いた気がしたけれど、お構いなしに教室の外へと引いて出た。
颯太なんか、知らない。
「茜ちゃん……!ト、トイレ!トイレ行こう!ね……っ?」
教室を出た途端、力が抜けて胡桃から手を離した。胡桃が大慌てで私の体を支えようと、腕を掴む。
「……ごめん、助かる」
「もうっ、茜ちゃんのバカ。無理しすぎだよ……」
何回もさせてきた胡桃の心配そうな表情を見て、胸が痛くなった。
私は、何回胡桃に心配させてきただろう。
それに見合うほど、私は胡桃が困ったときに助けてあげられていない。