ロスト・ラブ


走りつかれたのと、まだ帰りたくないのとで、私は近くにあった公園のベンチに腰掛けた。


夕日が見える。


今日お母さんの仕事、19時までだけ。

この夕日が沈み切る前には、家に帰って晩御飯のお手伝いでもしてないとなぁ。


……なんて、関係ないことを冷静に考えられている自分に笑いそうになった。


「あ~ぁ。明日からどうやって生きていこう」


本当に、バカみたいに颯太ばっかりだった。


避けられても、嫌われてても、好きで、好きで。


奇跡的にずっと同じクラスでいられたから、その姿を眺めているだけで楽しかった。

……のに、明日私は、颯太の姿を見て泣かないでいられるんだろうか。


「……あー、もう暗くなっちゃう」


早く帰らなきゃと思っていたくせに、気づいたときにはもうすっかり夕日が沈んでいた。


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