ロスト・ラブ
そろそろ、本気で帰らないと。
重い腰を持ち上げて、公園を出ようとした、その時だった。
「ねぇねぇ、お嬢ちゃん」
暗くなり始めた公園の中で、知らない男の人に話しかけられたのは。
一瞬ビクッと肩が跳ねて、ひやりと汗が伝う。
「な、なんですか……?」
恐る恐る返事をしてみると、思いのほかその人はニコリと笑った。
「ここの駅まで行きたいんだけど、行き方知らない?」
「え?……あ、道ですか」
まさかの道を尋ねられただけのことに、ホッと肩を撫でおろす。
そうだよね。こんな中学生の私が何かされるわけないよね。
一瞬疑ってしまったことに心の中で謝りながら、その人が手にしていた地図を確認しようと1歩近づいた……その一瞬だった。