ロスト・ラブ
───パシッ!
「っ!?」
声なんて出す余裕もなかった。
手首を掴まれて、一瞬で視界が傾く。
「ハハッ、か弱いね、お嬢ちゃん」
「や……っ」
逃げようとしても、掴まれた手はびくともしない。
そのままずるずると引っ張り込まれ、公園の茂みの陰にあったもう一つのベンチの上に押し倒された。
な、に……?
なにが起きて……。
真っ暗な視界の中、私の上に乗った男が不敵ににやりと笑う。
頭が真っ白になった。
手足が震える。
声が、……出ない。